冬の快適さに大きく影響するのは、住宅の断熱性能と気密性能です。その性能を高めると、誰もが驚くような住まいが出来上がります。「誰もが驚くような」とは、「どの程度の驚きなのか」をお伝えするため、まず、私自身が実際にその「性能の凄さ」に驚いてしまった経験談から、話を始めたいと思います。
20年前、マーケティング会社で住宅の窓ガラスや断熱材を扱う建材メーカーの仕事を担当していた中で、「高断熱・高気密工法というスゴイ住宅をつくる技術がある」という話を、いろいろなところで耳にしました。当時、私は、鉄筋コンクリートのマンションの日当たりのいい5階に住んでいて、冬でもとても暖かくて快適に暮らしていましたから、いくら「スゴイ」といっても、そのマンションよりも快適ということはないだろう、と勝手に決めつけていました。
「とにかくスゴイから、一度体験してみないか」と、工務店の経営者に誘われ、群馬県前橋市に建てられた「高断熱・高気密住宅」に体験宿泊することになりました。そして、すごい衝撃を受けることになるのです。その住宅は木造の一軒家で、玄関に入ると二階まで吹き抜けた広いホールがあります。そのホールと接して、一階と、中二階、二階にそれぞれ部屋が配置され、どの部屋もホールに対して広く開放されています。高低差をうまく利用することで、各部屋のプライバシーを確保しつつ、各部屋が閉鎖的にならず、開放的に感じるように、うまくデザインされています。
冬真っ只中の寒い日です。そんな開放的な間取りでは、普通でしたら寒くて仕方がないはずです。それが全く寒くないのです。しかも暖房は、ホールに設置された1台だけ。ここでの体験は、自分がそれまで抱いていた「快適さ」という概念を一新させるものでした。