夏には夏の暮らし、冬には冬の暮らし
季節に応じて、自然と共に暮らす「暮らし方」をお伝えします

第2回 体感原理がわかれば「快適さ」は自在につくれる

梅が丘の事務所での体験から、私に体感温度に関する興味が湧きはじめました。そうした私を更にのめり込ませたものがあります。

それは、「赤外線放射温度計」という計測器です。

放射温度計

この機械は、測定ボタンをポンと押すだけで、測りたいものの表面温度を数字で表示してくれる優れものです。
たとえば、この計測器のセンサーを離れた場所から天井の方に向けて、測定ボタンを押すと、その天井の表面温度が何度なのかを表示してくれます。そのものに直に触れなくても、瞬時にその表面温度がわかるのです。

はじめてこの機械を手にした私は、すっかりはまってしまいました。 この測定器をもって、いろいろなところを測ってみました。そうするうちに「へぇ~」って思うような体感原理の面白さが、わかってきました。

私は、それまで夏の暑さの原因を、「気温が高いからだ」と安直に決め付けていました。しかし、それは間違いだということに気がついたのです。たとえば、同じ30℃の気温でも、周りの状況が違えば、体感温度は全く違うのです。

先の赤外線放射温度計を持って測定することで私が納得した体験をひとつ紹介してみましょう。

よく晴れた夏のJR目白駅。時間は午後2時頃です。駅のホームに立っていると、うだるような暑さでした。こういう場面で、例の計測器を持ち歩いている私は、暑さの原因探しをすることがすっかり日課になっていました。気分は、犯人探しをするシャーロック・ホームズです。

目白駅ホーム

さっそく計測器を取り出して、周囲の表面温度を測ってみました。 ほどなく、私は、その犯人を探し当てました。「見つけたぞ! おまえが犯人か!」といった瞬間です。何が犯人だったのか、おわかりになりますか?

その犯人はホームの天井でした。その温度はなんと50℃。それが暑さの犯人だったのです。

その原因がわかると、同じホームでも、涼しく感じることのできる場所を探し当てることができるようになります。私は、写真の奥の方に写っている階段の下が涼しいにちがいないと考えました。その上には駅舎がのっていますので、その場所の天井は、太陽の日射の影響を受けず、表面温度が上がっていないはずです。

ホームで涼しい場所

測ってみると天井の温度は、31℃でした。推理どおりでした。さっきは、あんなに暑く感じたのに、この場所に来ると、もわっとした暑さがなくて、ウソみたいに涼しく感じます。

この二つの場所の気温は、実はそれほど大きくは変わりません。恐らくどちらも31℃近辺です。つまり、気温が同じでも、周囲の表面温度が変われば、体感温度は大きく変わるのです。

こうした体験をきっかけとして、私は、体感原理というものが肌感覚としてわかるようになってきました。そして、この原理がわかると、夏暑くて困っている住宅を一目見ただけで、その対応策を指摘することができるようになりました。 ここでは、こうした体感原理を確認しながら、涼しい家をつくる基本原理をお教えしたいと思います。



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